有限会社のような株式会社
最近、何人かの株式会社のオーナー社長から、「取締役を私だけにしたい」、「名前だけの監査役なんていらない」といった、『有限会社のような株式会社にしたい』ご相談をいただいたので今回は、このテーマです。
ちなみに有限会社は、平成18年の会社法施行により、根拠法が廃止され、以後、新たに設立することができなくなりました。当時存在していた有限会社は、『特例有限会社』という株式会社の一形態として存続していくことになり、以前からのメリットであった、役員の任期がない点や決算公告義務がない点は引き継がれた上、新たに『社債』や『新株予約権』の発行が可能になったりと、以前より自由度が増しました。規模が小さいイメージの有限会社ですが、資本金を10億円にすることも可能です。
また、特例有限会社は、一定の手続きを踏めば、株式会社に組織を変更することができます。この場合、有限会社の上記メリットはなくなってしまい、残念ながら二度と有限会社に戻ることはできません。
では、既存の株式会社を有限会社と同じような小さな規模にすることはできるのでしょうか。
平成18年4月以前、新会社を有限にするか株式にするか考える際、最低資本金の規制(有限300万・株式1000万)のほか、株式会社の取締役3名監査役1名の計4名の役員集めは、有限会社の取締役1名と比べて非常にネックでした。そのため、今でも数多くの株式会社で名義のみの役員が登記されています。会社法下では、規模・機関設計等で制限はあるものの、株式会社の取締役の人数は、『最低1名から』になりました。
しかし、どの会社も取締役1名で許されるのではなく、『規模・機関設計等によって制限』されます。
設立後まだ間もない会社以外の株式会社の登記簿の一番後の方には『取締役会設置会社』、『監査役設置会社』という登記事項があると思います。その登記がある場合、残念ながらそのままでは、取締役1名の株式会社にすることはできません。
『取締役会設置会社』と登記がある株式会社が、取締役1名・監査役なしの会社になりたい場合、
① 株主総会で取締役会・監査役廃止の定款変更特別決議を行い
② 取締役会・監査役廃止の登記
をする必要があります。
この変更登記の登録免許税が7万円もかかります。
変更する箇所 登録免許税
取締役会・監査役どちらも廃止 (3+3+1) 7万円
取締役会のみ廃止(監査役は残す) (3+3) 6万円~
取締役会は残して、監査役のみ廃止 × 不可
実際、今まで10社以上の会社が、この高額な手続費用により取締役会の廃止を留保しています。株主の数や構成によっては、小さい株式会社でも取締役会を置いておくメリットはありますが、当然、名前だけの役員を置くデメリットはあります。手続費用を超える何かがないと「チェンジ」は起こらないかもしれません。