私が相続手続に力を注ぐ理由

民法には次のような規定があります。
(特別受益者の相続分)
第903条  共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2  遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3  被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
特別受益者制度とは、一部の相続人が被相続人から特別な利益(特定目的の贈与または遺贈)を受けているとき、その贈与または遺贈を『相続分の前渡し』とみて、他の相続人との公平をはかる制度です。特別受益者について、その受けた利益を原則として法定または指定相続分から控除します。ちなみに以下の者が特別受益者となります。
① 被相続人から遺贈を受けた者
② 被相続人から「婚姻のために贈与」を受けた者
③ 被相続人から「養子縁組のために贈与」を受けた者
④ 被相続人から「生計の資本として贈与」を受けた者
※ 贈与には死因贈与(民法554条)を含む。
なお、相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされるので特別受益者とはなりません。代襲相続人については、代襲原因の発生後に被相続人から生前贈与を受けた代襲相続人は“当然に”特別受益者となりますが、代襲原因の発生前の生前贈与については見解が分かれています。(登記実務では特別受益にあたらない。)
ちなみに民法903条3項では、被相続人は遺留分に関する規定に反しない範囲内で遺贈または生前贈与した財産を特別受益制度の適用を受けない意思を表示できるとしています(持戻しの免除)。この場合、遺言等でその意思を表示します。なお、この持戻しの免除の意思表示が遺留分に関する規定に違反していても当然に無効となるわけではありません。
具体的相続分を有しない特別受益者を除いて行われた遺産分割協議も有効とされています。不動産の相続登記を申請する場合には、その協議に基づく遺産分割協議書と特別受益証明書を添付します。
実は私が相続の手続を主業務としたのは、この『特別受益』がきっかけです。というのも、私は23歳の時に祖父の相続の『特別受益』がきっかけで、父方の親戚との縁がぷっつりと切れてしまうという経験をしたのです。
祖父のケースは、代襲相続人への生計の資本としての贈与が特別受益にあたったケース。代襲相続人は自らの相続分をはるかに超える生前贈与を受けていたにもかかわらず、遺産分割の調停→審判と主張を繰り返し、結果相続分は無し。そして欲をかいたばっかりに、親戚からも愛想を尽かされました。正確な知識をもって冷静に判断することができていれば、こんなことにはならなかったと思います。きちんとした判断ができる人が身近にいれば相続で辛い思いをする人が減るはず、というのが私が相続業務を主軸に置いている理由です。困ったらいつでもご相談くださいね。

関連記事

  1. 遺産「再」分割
  2. 遺言を無効にしないために
  3. 抵当権設定について教えてください。
  4. 所有権移転登記の登録免許税の納付方法
  5. 持家 名義変更
  6. 賃貸不動産の更新料は有効
  7. 税制優遇を受ける一般社団法人
  8. 中間省略と相続登記

アーカイブ

PAGE TOP