本当に中小企業の事業承継の円滑化につながるのか?

本日、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成20年法律第33号)」の第2章『遺留分に関する民法の特例』の施行日が平成21年3月1日と官報にて公布されました。

この法律は、一定の要件を満たす中小企業の後継者が、先代経営者の遺留分権利者全員と合意を行い、経済産業大臣の確認及び”家庭裁判所の許可”を経ることを前提に、以下の遺留分に関する民法の特例の適用を受けることができるとするものです。

1 後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと

2 後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額とすること

※遺留分とは、亡くなった方(被相続人)が一定の法定相続人(兄弟姉妹除く)に対して必ず残してやらなくてはならない遺産の一定割合のことです。
被相続人が、この遺留分を無視して財産を他の者に贈与や遺贈すると、遺留分権利者はその遺留分に足りるまで、その贈与や遺贈から取り戻すことができます。

分かりやすく言うと、
1は、この法律を使って、遺留分権利者全員が合意をすれば、民法で規定されている遺留分を無視した取り決めができる ということです。

2は、後継者が先代経営者から自社株式の生前贈与を受けていた場合、この生前贈与の財産の評価は、贈与時ではなく、「先代経営者が亡くなった時(相続発生時)」をもって評価された金額を、相続財産の額にプラスされ、それぞれの相続分が算定されてしまいます。

しかし、この法律を使って、遺留分権利者全員が合意をすれば、その贈与株式の評価を合意時の価額に固定することができます。そうすると、後継者が贈与時から事業を頑張り、業績を上げた場合には株式の価値上昇の利益を後継者が得ることができます。ストックオプションに似た実質的なキャピタルゲインですね。

後継者が必死に会社の業績を上げても、会社経営に全く関与していない他の相続人にその利益を取られる可能性があれば、後継者も業務に粉骨砕身、励もうとは思えませんよね。

いままでは、この遺留分への配慮が原因で、事業用資産(自社株式など)以外に他に財産が少ない場合、後継者に対して、全ての事業用資産を集中することが困難でした。

日本経済新聞(平成20年7月16日)でも、「親族外承継」広がるとの見出しで、中小企業の少子化や厳しい経営環境での親族間承継の難しさの現実が伝えられています。
本当に、中小企業の事業承継の円滑化につながるのか、限定的な利用しかできないのか、今後も運用方法などを含め追跡していきます。

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