こんな遺言公正証書はいかが?

近年、注目度も、利用率も上がってきた公証役場で作成する「遺言公正証書」。検認手続が不要で、公証役場に原本も保管されるため私自身もよく業務で利用しています。
とはいえ、あまり不動産登記に関する造詣の深くない公証人・専門家が関わった場合、しばしば登記で使う時に不都合が出る事があります。昔の遺言で多いのが「不動産の特定」の方法。一般的に土地は『所在』と『地番』、建物は『所在』と『家屋番号』で特定していればまず間違いありませんが、あいまいな記載や『自宅』、『本家』といった記載のみで困ることがあります。遺言執行者の指定漏れも多々あり。
遺言公正証書には、遺言者の住所・職業・氏名・生年月日が記載されています。業歴10年、それが当たり前だと思っていましたが、先日、生年月日が「生年月」までしか記載されていない遺言公正証書に遭遇しました。
(例) 遺言者
(住所) 東京都大田区池上○丁目○番○号
(職業) 司法書士
(氏名) 小林 彰        ※一般的な記載↓
昭和50年8月生  [昭和50年8月13日生]
そこで普段あまり目にしない公証人法を調べてみました。
【公証人法】
第36条 公証人ノ作成スル証書ニハ其ノ本旨ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
1.証書ノ番号
2.嘱託人ノ住所、職業、氏名及年齢若法人ナルトキハ其ノ名称及事務所
(以下3.~10.省略)
遺言者(嘱託人)についての記載事項は、「住所」「職業」「氏名」及び『年齢』、生年月日は法定記載事項ではなかったんですね。これは不勉強でした。
念のため作成した公証役場と他の公証役場に確認したところ、『生年月日』を記載するのが普通で現在はどこもそうしているが、過去には法に基づいて、『生年月』までしか記載していなかった公証役場もあったとのこと。ちなみにこの遺言公正証書は昭和62年作成の物でした。
なお登記実務は、同一人であることが他の資料(戸籍書類等)で確認できれば登記は受理する取扱いですので、今回の登記も他の資料で確認ができていたため無事受理されました。さすが相続、奥が深いです。
 とはいえ、どうせ遺言を残すのであれば、将来その遺言の執行時に疑義が出るようなものでなく、しっかりしたものを残したいですね。

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