監査役の業務監査権限と会計監査権限
7月21日の衆議院の解散から8月30日の総選挙に向け、日に日に熱気が増しているようです。政権交代が騒がれる今回の選挙ですが、ある政党のマニフェストに「市場が求める情報開示、会計監査を確実に実行しうるガバナンスを担保するため、公開企業にのみ適用される特別法としての公開会社法の制定を検討します」とありました。
そんな上場会社のための公開会社法とは関係ありませんが、今回は、まず中小企業の『監査役の権限』について取り上げます。これが結構勘違いの多い部分なのです。
株式会社の監査役の監査権限には、大きく分けて、業務監査権限と会計監査権限があります。非公開(全ての株式に譲渡制限が付いている)の中小企業においては、ほとんどが”名ばかり監査役“であるという現実がありますが、もし会社で問題が起きた場合には”名ばかり“であっても当然監査役としての法的な責任を追及されることがあります。
会社法では、定款で定めれば非公開会社は監査役の権限を会計監査のみとすることができます。(第389条第1項:非公開会社であっても大会社は不可。)
会社法施行の平成18年5月、経過措置等を定めた「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(「整備法」)も同時に施行されました。その整備法は、第53条で[監査役の権限の範囲に関する経過措置]について次のように定めています。
『旧商法特例法第1条の2第2項に規定する小会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす』
簡単に言うと、「平成18年5月1日時点で資本金1億円以下(負債200億円未満)の非公開会社の監査役は、定款を変更しない限り、会計監査権限しかない」ということです。なお、会計監査権限のみかは登記簿には載ってきません。
監査役への就任依頼がある方は、しっかり確認をしておかないと後で多大な責任を負うことになるかもしれません。