不動産の相続登記について

「上手な法律との付き合い方」の2008年12月号で、法定相続人の中に、①商売をしている人、②借金がある人 がいる場合の不動産の相続登記を先延ばしにすることのデメリットを取り上げました。今回は相続登記をしないことのデメリットの第2弾です。

不動産の権利の登記には、登記の期限がありませんから(あくまで登記は対抗要件)、現時点で上記の①②に該当せず急いで登記をする理由がなければ、登記料の出費を先延ばしにするのは仕方ないかもしれません。しかし、何もしていないことや遺産分割協議が済んでいながらその登記をしていないことがマイナスに働くことがあるのです。それは債権者の『詐害行為取消権』(民法第424条)の存在です。

「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定するものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるから、詐害行為取消権の対象となり得る(最判平成11・6・11)」

この裁判例は、『借金を返さなければいけない状態になった法定相続人の一人が、登記をせず放置していた相続財産を他の相続人の所有とする遺産分割協議をし、登記をした上で、自らはその後自己破産した』ケースです。

相続発生時には経済的に問題がなかった法定相続人がその後の状況の変化によって、このケースのようになることはあり得ます。時が経つと、法定相続人が一人亡くなり、もう一人亡くなり、気づいた時には、もともと4人だった法定相続人が15人の大所帯になっていたケースもありました。

「だからあの時やっておけばよかった」と後の祭りにならないように手続きは早め早めにお願いします。

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