免許証をよく見てみよう

ここのところ住基カードの不正取得事件が多発していますが、これは司法書士にとっても切実な問題です。たとえ取得方法が不正であったとしても、正式な住基カードとして世に出回っているというのは、非常に厄介です。
これらの不正取得事件は、明らかになっているだけでも平成22年8月18日の時点で都内で十一区・27件(未遂も含む)もあるそうです。これらは偽造運転免許証を使って住基カードを取得しているわけですが、新たに発覚したケースは各区が把握していた過去に偽造免許証に使われた免許証番号と異なるものを使うなど、役所では見抜くことができませんでした。また一部の区では、不正取得のために窓口に訪れた男は区職員からの住所・本籍などの質問にもしっかりと回答したそうです。実に手口が巧妙ですね。
そこで今回は、司法書士である私が実際に使っている運転免許証の確認方法の一部をお話しします。ご存じの方も多いかもしれませんし、これで万全なわけではありません。しかしながら、東京法務局管内で最近起きた偽造運転免許証等を使った登記申請事件は、以下の方法でしっかりと確認をしていれば偽造に気付けた可能性があります。
なお、これらの方法でみなさんが免許証の真偽を確認する場合は、あくまで自己責任でお願いいたします。
● 外形などについてのチェック
A 目の前の本人と免許証の写真を見比べ、同一人物かどうか(年齢相応かどうかも含めて)。
B 免許証が有効期限内かどうか。(新旧の免許証で有効期限の定め方が異なる)
C (裏面の記載も含め)生年月日、名前、住所が印鑑証明書等の他の証明書と完全に一致しているか。(証明書類は、透かし等により原本であることを確認する。)
D 裏側から見て、蛍光灯等に透かし、「マル交」透かしマークがあるか。ICカード免許証はICチップが透けて見えるか。
E 免許証の厚みはどうか。ICカード免許証は厚め(0.76mm)でクレジットカードと同じ。旧タイプは薄め(0.5mm)。
F 生年月日の数字は半角になっているか。  など
これらを自分の免許証と比較し、写真部分の盛り上がりや手触り、文字のにじみなどを含め確認します。
● 隠れた内容などについてのチェック
運転免許証の番号(12ケタ)
第 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ 号
A A B B C C C C C C D E
この12ケタの免許証番号にはいくつかの情報が隠されています。はじめの2ケタの『AA』は、最初に免許の交付を受けた都道府県公安委員会を表しています(東京は[30]、神奈川は[45]、旭川は[12]など)。
次の2ケタ『BB』は、最初の免許の取得年(西暦)の下2ケタです(1992年に取得していると[92])。最後の1ケタは取消・失効を除く再交付の回数を表しています。これらは一致しないこともあるようですが、会話の中で上記の内容を織り交ぜながら、相手の発言に違和感がないかを確かめます。
最後に①から⑩ケタ目(AABBCCCCCC)までの数字を見ます。これらは『モジュラス11ウェイト』という計算法に基づいて並んでいるので、①ケタ目からそれぞれに5・4・3・2・7・6・5・4・3・2を掛け、出た積を全て足し、その結果を11で割って出た『余り』を11から引いた数の下1ケタが⑪ケタ目のDの数字と同じになるはずなのでそれを確認します。
もっとも常にこれらのチェックの全てを行っているわけではなく、不動産登記における本人確認情報の作成や違和感がある取引時などに行うことでリスクを回避しています。

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