使おう!株主総会決議の省略
「中小企業の株主総会は、司法書士さんの事務所のパソコンの中で開催されていますよね(笑)。」
先月、司法書士の研修で講師を務めていた弁護士さんのセリフです。研修会場の司法書士はみな苦笑いでした。
株主総会に関する規定は、会社法第295条(株主総会の権限)から始まりますが、日本の会社の大部分の中小・同族会社では、株主総会という「機関」は形骸化し、大部分の株式を持つ社長が全てを決定しているのが現実です。
「株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法がある」
(最二小判H21.12.18集民232号803頁)
これは、先に述べた中小企業ではよくある株主総会の決議事項であっても大部分の株式を有する会社代表者の決済をもって株主総会の決議に代えていた会社のケースです。(このケースでは総会決議も代表者決裁もなかった。)
どうせ株主総会を開催しないのであれば、上場会社の子会社などではよく使われている『株主総会の決議・報告の省略』(会社法第319・320条)を使ってはどうでしょう。
形だけの株主総会と違い、中小企業の実態に一番合っている制度ですし、定款の規定も不要です。この株主総会の決議省略は、定時株主総会でも可能で、議事録の押印も定款の規定にかかわらず議事録作成にかかる取締役のみです。しかも総会を開催しないので招集手続きも不要。欠点は株主全員から書面もしくは電磁的記録での同意が必要な点ですが、そこは会社代表者のチカラが強い中小企業であれば可能なはずです。
この方法は、定款で株主総会の招集権者を代表取締役としている取締役会非設置会社で代表取締役が不在のため株主総会が開催できないようなケースでも使えます。
本業に影響するようなもめごとを避けるため、使える仕組みはどんどん使っていきましょう。