もし民法が改正されたら...
2月19日、法務省が今国会に提出予定の民法改正案を発表しました。現段階では、亀井金融相が反対するなど慎重意見も多いようで、成立するかどうかは微妙ではありますが、概要は以下のとおりです。
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4. 選択的夫婦別姓制度の導入
女性が結婚できる年齢を18歳に引き上げる
法律上の夫婦の子である“嫡出子”と婚姻届出をしていない男女の子である“非嫡出子”の法定相続分を同等にする
女性の再婚禁止期間を離婚後6カ月から100日に短縮する など
今回は、3番目の『法律上の夫婦の子である“嫡出子”と婚姻届出をしていない男女の子である“非嫡出子”の法定相続分を同等にする』が成立するとどうなるか考えてみます。
非嫡出子の法定相続分が嫡出子と同等、今の倍になるとどういったことが起きるでしょうか。ちなみに現行の民法は、以下のように定めています。
(法定相続分)
第 900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
① 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
②③ (省略)
④ 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
(遺留分の帰属及びその割合)
第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
① 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
② 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
(代襲相続及び相続分の規定の準用)
第1044条 第887条第2項及び第3項、第900条、第901条、第903条並びに第904条の規定は、遺留分について準用する。
なぜ、一緒に遺留分に関する条文を取り上げたかというと、《法定相続分が増える=遺留分も増える》からです。遺言書作成をサポートしている立場からすると、改正後の手続より、既に現行民法に基づき作成された遺言書で当初の遺言の目的が達成できなくなるのでは、と心配になります。
一般的に遺言書を作成する場合、法定相続分に従わず、特定のだれか(相続人・第三者)に多くの財産を与えたいというケースがほとんどです。そういった場合の遺言の内容は、他の相続人の遺留分を害さないよう(後で遺留分権利者が遺言の内容に文句を言えないよう)考えに考えた上で作成します。遺言で「誰々にどの財産を与える」と遺留分対策をしている場合、内容によっては遺言を残した目的(争い防止や事業承継対策)が達成されなくなる可能性(遺留分に満たないため相続人間で争いが起きる)が出てきます。
【例】被相続人:A
法定相続人:妻B、嫡出子C(AとBの子)、非嫡出子D(Aと内縁の妻の子)
【 現行民法 】 【 改正案 】
法定相続分: B 3/6、C 2/6、D 1/6
遺留分: B 3/12、C 2/12、D 1/12 法定相続分:B 2/4、C 1/4、D 1/4
遺留分: B 2/8、C 1/8、D 1/8
特に中小企業の経営者など、所有財産の大部分が自社株式である場合は問題になりやすいかもしれません。
もし改正案が成立すれば、人によっては遺言の内容を再検討する必要が出てくるかもしれません。また、改正に伴い旧法に対する整備法がどうなるかも興味があるところです。