遺言を書く人、書かない人

最近、40代・50代の比較的若い世代で遺言を作成する人が増えているそうです。一般の方の相続・遺言についての関心や知識が増え、さらに震災がきっかけになっているのだと思います。ちなみに震災前ですが、遺言信託を扱う信託銀行が預かる遺言書は2010年度には72,333件、10年前の2.3倍になったそうです。(平成12年は31,251件)[社団法人信託協会の信託統計より]
我々専門家からするとやはり遺言は公正証書遺言で作成して欲しいところです。その公正証書遺言のメリットは、
A 方式の不備で遺言が無効になることがない
B 原本が公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配がない
C 自筆遺言と異なり家庭裁判所での検認が必要ない
ですが、実は今回の震災による津波でそのメリットも揺らいでいます。以下は、平成23年8月22日に出された仙台法務局気仙沼支局からのお願いです。
流出した公正証書等に関する資料提供のお願い
仙台法務局気仙沼支局で保管していた公正証書等は,本年3月11日に発生した東日本大震災に伴う津波により一部が流出したため,当局において探索等を続けてまいりましたが,なお一部の公正証書等を発見することができず,それらについては,「滅失」したと判断せざるを得ません。
そのため,滅失した公正証書等について,再製手続を実施することとしました。<以下省略>           (仙台法務局のサイトより)
平成21年1月1日から平成23年3月11日までの間に作成された公正証書及び同期間に認証を受けた定款が流出してしまったようです。まさに泣きっ面に蜂です。
ただ公正証書遺言の作成には費用がかかるので若い世代が自筆証書遺言を選ぶのも仕方ないのかもしれません。家庭裁判所での遺言書の検認手続の数も平成22年は14,996件と2年前の約113%に着実に増えています。
公正証書遺言は内容の実現性は高いですが、それでも年間10件前後は無効とする裁判所の判断があります。多くの銀行はそれを受けて、公正証書遺言があっても、預金の解約に法定相続人全員の押印と印鑑証明書を求めます。
どの形式であれ、遺言は生前であればいつでも取消し、変更することができますので、何が起きるか分からない世の中、また相続はもめるものと考え、まずは自筆証書遺言から、明日何かがあった時のための準備、始めてみませんか。

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