公証人の知恵袋
公証人とは、原則30年以上の実務経験を有する法律実務家の中から、法務大臣が任命する公務員で、そのほとんどが経験豊富な裁判官や検察官のOBです。
公証人は、公証役場で大きく分けて、(1) 公正証書の作成、(2) 私署証書や会社等の定款に対する認証の付与、(3) 私署証書に対する確定日付の付与の3種類の執務を行っています。
公証人の大きな仕事の一つである、公正証書による遺言の件数は年々増加しており、(少し古いですが)平成18年の作成件数は7万件を超え、25年前の約2倍となっており、平成19年も同様の増加傾向がみられたとのことです。
公正証書遺言であっても、もちろん相続開始後に裁判で無効となることはありますが、
A 方式の不備で遺言が無効になることがない
B 原本が公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配がない
C 自筆遺言と異なり家庭裁判所での検認が必要ない
といったメリットや専門家の公証人と打合せの上で進められるという安心感もあってか現在も件数は増え続けています。
しかし、公正証書による遺言の場合、
① 遺言の意味を理解し、特に財産の後釜を決めるという意味を理解する能力という遺言能力(意思能力)
② 遺言の内容を口頭で敢えて口に出して喋り、言語にして外界に真意(意思表示)を公証人及び二人の証人に伝えることのできる能力(口授能力、ただし筆談・専門通訳でも可) の両方が必要になります。
高齢者の場合など、健康の状態によっては上記②の口授能力に欠け、筆談する力もないケースがあります。この場合、公正証書による遺言という方法を取ることができません。ここで死因贈与契約の登場です。(死因贈与:贈与する者の死亡によって効力が生じる生前の財産の贈与契約)
死因贈与は取引行為ではあるものの、②の口授能力は必要ないので意思能力があれば契約が可能です。これにより当初の目的を達成できる可能性が出てきます。
これは公正証書による遺言ができず困っていた時、蒲田公証役場の公証人に提案を受けた実際の例です。(ただ本例では、死因贈与で話がまとまり、当事者の印鑑証明書の準備が整い、いざ明日公証役場で契約という時に贈与者が亡くなってしまったそうです。)
困ったときの相談先に、来年から公証役場を加えたら意外な解決法が見つかるかもしれません。相談は無料です。